2017.08.13(日)大会

【世界選手権】デイリーハイライト(Day9)

日本、男子4×100mRで銅メダル!
ボルト、まさかの負傷棄権で幕引き

 世界選手権も残り2日となった8月12日。大会9日目のこの日は、モーニングセッションで男女ともに4×100mRと4×400mRの予選が行われ、男子4×100mRと男子4×400mRに日本チームが出場しました。
 男子4×100mRでは、2組3着+2の条件で行われ、日本は1組目に登場しました。1走から順に、多田修平選手(関西学院大)、飯塚翔太選手(ミズノ)、桐生祥秀選手(東洋大)、ケンブリッジ飛鳥選手(Nike)のオーダーでレースに臨み、アメリカ(37秒70)、イギリス(37秒76)に次いで3着・38秒21でフィニッシュ。同日のイブニングセッションで行われる決勝に進出しました。なお、第2組では、予選からウサイン・ボルト選手がアンカーを務めたジャマイカが37秒95で1着となり、決勝に駒を進めています。
 この結果、予選を通過したのは、アメリカ(37秒70=予選タイム、以下同)、イギリス(37秒76)、ジャマイカ(37秒95)、フランス(38秒03)、中国(38秒20)、日本(38秒21)、トルコ(38秒44)、カナダ(38秒48)の8チーム。日本は全体で6番目のタイムで、決勝は9レーンに入ることになりました。
 続いて行われた男子4×400mR予選も2組で行われ、決勝進出の条件も3着+2で行われました。日本は2組目に登場。佐藤拳太郎選手(富士通)、金丸祐三選手(大塚製薬)、木村和史選手(四電工)、堀井浩介選手(住友電工)のオーダーで決勝進出に挑みましたが、序盤から上位争いから離される厳しい展開に。順位を上げることができず、3分07秒29・8着で予選敗退となりました。
 この日のイブニングセッションでは、後半が行われた男子十種競技を含めて7種目の決勝が行われました。ウイークエンドとなる土曜日であるうえに、イギリスの人気選手であるモハメド・ファラー選手(イギリス)が10000mとの2冠を狙って挑む男子5000m決勝や、さらにはウサイン・ボルト選手の現役最後のレースとなる男子4×100mR決勝が実施されることもあり、ロンドン・スタジアムは満員となり、大きく盛り上がりました。
 午前から2日目の5種目が行われた男子十種競技は、前半を26位・27位で折り返した中村明彦選手と右代啓祐選手(ともに、スズキ浜松AC)が後半戦に挑みました。中村選手は3721点を、右代選手は3813点を獲得。中村選手が19位(7646点)、右代選手は20位(7498点)で競技を終了しました。なお、中村選手は、最後の1500mでスタート直後から飛び出して、そのまま独走するレースを展開し、観客を大いに沸かせました。4分22秒62秒でフィニッシュし、種目別トップの成績を収めています。
 第9日の最終種目となったのは、男子4×100mR決勝。2レーンからカナダ、トルコ、アメリカ、ジャマイカ、フランス、イギリス、中国、日本という並びでのスタートとなりました。9レーンの日本は、予選からアンカーを変更して多田、飯塚、桐生、藤光謙司(ゼンリン)のオーダーで出場。4選手は、それぞれに持ち味を生かす走りを見せて、38秒04・3位でフィニッシュラインへ飛び込みました。
 日本は、オリンピックでは昨年のリオ大会で銀メダルを獲得していますが、世界選手権では4位(2001年エドモントン大会、2009年ベルリン大会)が最高で、メダルの獲得は初めて。2大会ぶり8回目の入賞を達成しました。
 この種目を制したのは、開催国のイギリス。今季世界最高となる37秒47をマークして、予選をトップタイムで通過したアメリカ(37秒52)を制しました。また、この両国を追う形でバトンを受けたジャマイカのボルト選手は、ホームストレートで加速に乗ろうとした瞬間に、左ハムストリングスを痛めるアクシデントに見舞われ転倒。ジャマイカチームは棄権に終わる結果となりました。

【選手コメント】
◎日本(多田、飯塚、桐生、ケンブリッジ)
男子4×100mR予選 1組2着 38秒21=決勝へ
・1走:多田修平選手(関西学院大)
「スタートがあまりハマらなくて、走り全体もイマイチだった。決勝ではいいパフォーマンスができるように調整していきたい。」
・2走:飯塚翔太選手(ミズノ)
「バトンはまだ修正点がある。自分自身の走りも決勝では気持ちを入れて走れれば、かなりタイムは伸びてくると思う。決勝ではかなりタイムを縮められると思うので、自分のやる仕事を確認して、メダルに絡んでいけるように頑張りたい。」
・3走・桐生祥秀選手(東洋大)
「こっちに来て初めて(レースを)走ったので、決勝ではもう一段走力が上がるかなと思っている。」
・4走・ケンブリッジ飛鳥選手(Nike)
「バトンも走りも、まだまだ改善できるかなと思っている。」 

◎日本(佐藤、金丸、木村、堀井)
男子4×400mR予選 2組8着 3分07秒29
・1走:佐藤拳太郎選手(富士通)
「1走の僕が、もっと前半からちゃんと前のほうについていって、レースをつくっていかなきゃいけなかったのに、出遅れてしまった。今回のレースは全部僕に責任があると思う。
 今回、大会までの練習の調子はよく、コンディションもよかったので、精神的にも行けるなと思っていたのだが、いざ走ってみると大きく出遅れてしまった。自分のふがいなさや足の遅さを改めて痛感した。」
・2走:金丸祐三選手(大塚製薬)
「ちょっと言葉にならないというのが正直なところ。ここまでの結果になるというのは何かしらの原因があったと思うのだが…。この結果というのは正直受け入れがたい。
 レースに向けては、現状でトップ争いするのは厳しいというのはわかっていたので、なんとか(プラスで)ひっかかるところまで食らいついていくこと、そして個々が最高の走りをすることが目標だった。それに対して結果がついてくればよかったのだが…。
 個々の力を見れば、日本記録にチャレンジする力があってもおかしくないはず。(世界大会出場が)初めての選手も多いが、ここまでの結果にはならないと思っていたので、それだけにショックが大きい。
 記録が出ているのに、これだけ本番に弱いということは、僕は、日本の400mの選手全体がちょっとスマートになりすぎているのではないかと思う。もっと泥臭くやっていくべきではないか。このままでは、取り残されたままで終わっていくような気がする。根底から見直さないといけないな、と感じている。」
・3走:木村和史選手(四電工)
「こういう舞台が初めてということもあって、雰囲気にのまれてしまい、(本来の)自分の走りとはほど遠い走りをしてしまったことが一番の反省点。これから東京五輪もあるので、世界と戦っていける選手になれるよう、こういう経験をもっと積んで、東京五輪で決勝に、4継(4×100mR)みたいにメダル争いできるようにしていきたい。
 自分の武器は後半なのだが、レースで思ったより離されていたので、前半から飛ばしていくか、それとも後半で勝負するかと天秤にかけてしまい、力んではいけないバックストレートで力んでしまった。それで終盤もつらくなって、全部がダメになってしまった形。自分の武器が後半といっても、世界では全然歯が立たないんだなということがわかった。国内で勝つためのレースをしていてはダメだということが、今回初めてわかった。テレビで見ていたときにはわからなかったスピード感などが、出場して初めて実感できたことが一番の成果かなと思う。」
・4走:堀井浩介選手(住友電工)
「今回の試合が、日本のマイルリレーの1つのきっかけとなって、2020年(東京五輪)に向けていい流れをつくることができたら、と思っていたのだが、なかなか思うようなレースができず、悔しい気持ちでいっぱいである。
 自分自身の走りを振り返っても、前の選手(3・4走でバトンを落として上位争いから遅れたボツワナ)にしっかりついていって、最後抜かせるかなと思っていたが、それができず、悔しい走りとなってしまった。
(初の世界選手権で緊張はあった? との問いに)日本代表として、日本を背負って走るので緊張はあったけれど、初の舞台ということで、普段では味わえない雰囲気とか、レベルの高い選手たちと走れることに対する楽しさがあったので、そこまで緊張はなかった。」

◎中村明彦選手(スズキ浜松AC)
男子十種競技 19位 7646点
「長くて苦しい2日間だった。こういう年に1回続いている世界大会(2015年世界選手権、2016年五輪、2017年世界選手権)で、こういう試合が続いているので、いい加減成長しなければいけないなと思いながら試合をしていた。
(2日目は)もうなるようにしかならないと思って行った。ウォーミングアップでもしっかり(身体は)動いていたのだが、攻めに行った結果、バランスを崩したり、試技の3本目で記録を残せなかったりした。そこがまだまだ弱いと感じる。
(9種目めの)やり投が飛んでくれたので、少し気が楽になった。もっと早くこういうパフォーマンスをしなきゃいけなかったなと思った。(種目別トップを取った)1500mは、タイムはあまりよくないのだが、1周どこを走っていてもすごい歓声が耳に入ってきて、こういうのをほかの9種目で味わえたら幸せだったなと思いながら走っていた。
 去年のオリンピックが終わってから、この大会に向けて、いろいろ試行錯誤しながらここまで来たのだが、それが形にならなかったのが悔しいし、また、その形にならなかったのが途中経過なのか、完成形として形にならなかったのかを見極めなければならないと思う。また、ここ一番の勝負所できっちり記録を出すことが最近できていないので、それがどこから来るのかを、今日戦った(海外の)仲間たちや、ハキーム選手(サニブラウン)や4継(4×100mR)のメンバーを見習って、取り組んでいきたい。」
 
◎右代啓祐選手(スズキ浜松AC)
男子十種競技 20位 7498点
「調子は悪いわけではないのだが、今年は勝負所で勝負ができないなという感じがある。今回も、やり投などは1投目を無難に投げて、2投目で勝負というところでブロック足を捻るなど、勝負したいところで力が発揮できなかったことが正直悔しい。でも、こうやって最後までやりきることで、2012年ロンドン五輪のときの(自分が)若かったときの気持ちに戻れたような思いもあり、この大観衆のなかでメダルを取りたいという気持ちがより高まった試合となった。
(大丈夫と言っていた)膝の痛みは、今年はずっとあるので仕方がないのだが、膝の痛みでどうこうというよりも、力を出せなかった自分に悔しさを感じている。(膝は)この試合が終わったら、しっかり治そうという思いでいる。
(結果を踏まえ、今後、どうしたいか、との問いに)技術的なことよりは、“力を出し切れなかった”という、この感情を忘れたくない。それを心に刻みたい。今、新たに取り組んでいることもいろいろある。それを継続してやっていけば、メダルは取れると思っているので頑張りたい。」 

◎日本(多田、飯塚、桐生、藤光)
男子4×100mR決勝 3位 38秒04
・1走:多田修平選手(関西学院大)
「予選よりもスタートがだいぶ決まって、中盤もよく加速に乗れた。その結果、ベストの走りができて、飯塚さんに(バトンを)渡せたのでよかったと思う。僕は直線の(直走路で走る)のほうが得意なので、9レーンとなった決勝は、カーブが緩やかなぶん予選の5レーンよりも走りやすかった。初めてのリレーなので不安もあったが、飯塚さんのことを信頼しているので、とりあえずバトンをぶち込もうという考えで走った。
(走りの感覚は)予選よりも格段によかった。身体の軽さも全然違っていたし、スタートも決まったので、よかったと思う。」
・2走:飯塚翔太選手(ミズノ)
「バトンが少し詰まってしまったが、桐生くんだけを見て、一所懸命走った。本当によかった。嬉しい。(多田選手から)バトンをもらったときの勢いのつき方は予選よりもよかったと思う。予選が終わった後に、これくらいのタイムはバトン次第で縮められる。それだけの力はあるとみんなで話をしていた。
 予選はバトンがすべての区間で失敗していた。傍から見たらスムーズに見えたかもしれないが、詰まったり互いに(スピードを)緩めたりというのがあったので、(決勝での)具体的なタイムは意識していなかったが、タイムをもっと上げて、メダル争いに絡めるよういしようという話をしていた。スタッフ陣ともミーティングで、“メダルを取りに行こう、“攻めるバトンをしよう”という話をして臨んだ。」
・3走・桐生祥秀選手(東洋大)
「(スタートを切る目安となる距離の)歩数を、予選より飯塚さんのところを延ばしたし、藤光さんのところも練習よりも1足分延ばした。決勝は1番か8番かを狙っていくというくらい攻めのバトンで行った。本当にメダルが取れてよかったと思う。
 予選の走りは、(個人種目に出ていない)フレッシュマン(笑)だったので(自分で出来は)よくわからない。予選も走りとしては悪くなかったと思うが、決勝のほうがさらによくなったと思う。今回はリレーのために来たので、そこで力を発揮して、メダルを取ろうという気持ちだった。
 足長を広げたのは、予選で僕自身が走れていたから。藤光さんに“1足(長)延ばしても僕は届けます”と言っていた。走れている感覚もあったし、やっと(走れるときが)来たという思いで気合も入っていたので、飯塚さんを信じて僕もリオのときみたいに(思いきり)出たし、藤光さんに(対して)も“躊躇せずに出てください”と伝えた。それが加速に乗りやすかったのかなと思う。」
4走・藤光謙司選手(ゼンリン)
「昨年からの“走りたい”という気持ちが1年越しにかなった。1・2走のバトンを見て、“行けるな”という感覚が持てたので、自分の走りをすれば結果はついてくるんだろうなという気持ちで走れた。レース内容はあまり覚えていないが、すごく気持ちよく走れたという思いが残っている。本当に最高の気分。
 ボルト選手が止まったのは横目で見えたが、それは気にせずに、自分のレーンだけ見て、ゴールだけ見て、自分の走りに集中した。順番はなんとなくよさそうだという感覚はあったが、確認する余裕はなかったので、0.1秒でも速くという気持ちで走った。結果を見るまでは(メダルを取ったという)確信は持てなかった。
 急きょ走ることになったわけだが、準備はずっとしていた。どうなるのかわからないというのは知っていたし、何があるかわからないと思っていた。経験上、世界選手権はこういうことがよく起きるので、心構えはしていて、“行け”と言われたら、いつでも、何走でも行ける気持ちでいた。動揺もなかったし、素直にスッと入れたと思う。
 誰が走っても結果がついてくるチームだと思っていた。昨年の銀メダルがあって、そこで今年の世界選手権でどういう戦いができるのか注目されていたはず。期待されたなかで結果を残せたことは大きい。メンバーが2枚替わってもこういう結果が出せたということで、層の厚さも示すことができたと思う。」

文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真提供:フォートキシモト

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